障がい者スポーツを応援する:SPORTRAIT

THE SUPPORTERS

小澤 徹さん

株式会社オーエックスエンジニアリング

千葉県に本社を構える株式会社オーエックスエンジニアリング。長年培ったモーターサイクル・レーシング・テクノロジーを車いすの開発・製造に応用、7度の世界大会(アトランタ・長野・シドニー・アテネ・北京・ロンドン・ソチ)において計106個のメダルを獲得している企業である。同社で長年、レーサーと呼ばれる3輪の陸上競技用車いすの開発・製造・販売に携わる小澤 徹さん。車いす陸上競技の大会の会場でも、彼の姿を見かけることがある。同社のメンテナンスエリアが設置され、多くのトップアスリートが小澤さんを頼ってブースを訪れる。「少しでも速く、乗りやすいレーサーを」穏やかに笑いながらも力強く話す小澤さん。数多くのトップアスリートが訪れたであろう仕事現場にお邪魔して、そのシンプルな言葉に込められた性能向上の鍵や、車いす陸上への思いを伺った。
元々、モノづくりが好きだった
Q.陸上競技用の車いすの製作に携わることになったきっかけを教えて下さい。
 今思うと、1998年の長野で行われた障がい者スポーツの世界大会を見たことがきっかけだったかもしれません。元々モノづくりがしたくて、好きだった自転車のビルダーになろうと思っていたのですが、メダリストが乗っている競技用車いすを製造・販売している会社が千葉にあると知り、年内には入社を決めていました。入社後、約1年間は、テニスやバスケットボール用の車いすの組み立てを担当。新型の陸上競技用車いすを発売するタイミングで、手伝いを頼まれてから、気が付くと15年以上は、陸上競技一筋で製造・販売・メンテナンスに携わっていますね。

いくら技術が向上してもレーサーを操るのは選手
Q.レーサーを作る上で最も難しいことは何でしょう?
 技術的な面で挙げるとすると、パイプとパイプを継ぎ合わせる溶接作業です。しかし、設計図に忠実なレーサーを作れたとしても完璧ではありません。レーサーを操るのは選手です。選手の意向を無視したものが出来上がっても意味がありません。トップレベルの選手は、自分の目指すものが明確にあります。私も、選手の目指すもの、見据える目標を聞き、しっかり理解した上でそれに合ったレーサーを作ります。「この車ができたので乗って下さい」ということは絶対にしません。反対に、目指すものがぶれている選手の要望には即座に対応せず、「前回の要望はこうだったけど、すぐに変えて大丈夫?」と問いかけ、時間をかけて対応します。しっかりと見極めて欲しいからです。すべてを口で語るとは限らない選手の要望をくみ取り、反映させていくことが難しいところです。ある海外の選手が「私が納得するレーサーが作れたら乗ってあげる」と言って帰国していったことがありました。その時は、何が何でもぴったりのものを作ってやるぞと燃えましたね。今では、当社のレーサーに乗って数多くの成績を残してくれています。

多くの選手に乗ってもらえるレーサーを
Q.他社との違い、強みは何でしょうか?
 トップアスリートも一般ユーザーも製品の採寸や工程は同じですが、どんなレーサーにしたいか明確であればより細かい採寸を行います。選手の体型、身体特性を把握し、大会や練習、採寸時のコミュニケーションから、個人の要望や目指す方向性を共有することで設計や調整、開発に反映しています。また、当社はアスリート同様、4年ごとの大会に照準を合わせ新製品の開発を行っています。例えば、2016年のリオに向けて開発しているレーサーは、使用する素材を変え、乗車位置の形状を多くの選手が乗りやすいものに変えるなどの開発・改良を進めています。個人の要望に応えていくことで世界トップレベルのレーサーを生み出し、その技術力を応用させながら多くの選手に乗ってもらえるレーサーを作っていきたいと考えています。

選手が勝ってくれることが一番のやりがい
Q.小澤さんが今後目指していることは、何ですか?
 車いす陸上のメカニックは選手と共に活動していくので、長い選手になると10年来のお付き合いになります。また、会社としても車いす陸上の裾野拡大のため、ジュニア選手の支援活動を行っており、若い選手との交流も多くあります。恐る恐る競技用車いすに乗り、あいさつもままならなかった子が、立派な青年に成長し、世界で戦うトップアスリートと肩を並べるようになった姿を見るとうれしくなります。今後も支援をしている国内外の選手がメダルを取り、良い記録を出せるようにサポートしていきたいです。やはり、選手が勝ってくれることが、一番のやりがいですから。そんな選手たちが2020年の東京大会で活躍することを考えると、わくわくしますね。

小澤 徹(おざわ とおる)

千葉県生まれ。千葉工業大学卒業。1998年にオーエックスエンジニアリング入社。
テニス用車いす、バスケットボール用車いすの組立業務に携わったのち、
1999年からレース用車いすを担当。
2008年北京パラリンピック、2012年ロンドンパラリンピックの
日本選手団陸上競技用車いすのメカニックを担当。
現在までのレース用車いす製作台数は約1,000台。
 
所属先:株式会社オーエックスエンジニアリング
設立:1988年(昭和63年)10月
住所:千葉県千葉市若葉区中田町2186-1
事業内容:車いすの開発・製造・販売、自転車の開発・製造・販売
URLhttp://www.oxgroup.co.jp/