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POINT OF THE GAMES

コレだけは覚えておきたい!観戦ルールブック

1
課題克服に地道な積み上げの日々
緊急事態宣言が解除され、髙桑選手が競技場での練習を再開したのは6月1日。「一から走りを組み立てる」ことからスタートしたという。およそ2カ月ぶりに全速力で走った際、最初に出てきた感想は「走るって難しい」だった。 「これまでずっと自分がイメージしている走りができていなくて、“自分はこういうふうに走りたいのに”っていう思いがありました。それが昨年末の合宿でようやくイメージ通りに走れるようになってきたかなといい感触を得ていたんです。ただその後、自粛期間が2カ月あったので、また一から再スタートという感じでやっているのですが、改めて走ることの難しさを感じながら練習しています」 リオパラリンピックで13秒43の自己ベストをマークし、本番での強さを発揮した髙桑選手。だが、実はそれ以来、記録を更新することができていない実情がある。彼女のT64クラス(片脚下腿切断など)では、12秒台がメダル争いの条件となりつつある中、苦戦が続いている。昨年11月の世界選手権(UAE・ドバイ)では、13秒71と自己ベストに及ばず、予選敗退を喫した。 髙桑選手が「長年の課題」としているのが、後半での加速だ。スタートからの勢いを中盤にトップギアへと押し上げ、そこから終盤にいかにスピードをキープしていくかがスプリントにおける重要なポイントの一つとなる。髙桑選手はスタートについてはトレーニングの成果が表れているが、そこからの加速がまだ不足しているのだという。スピードのピークを高めることによって、後半での失速を抑えることが課題となっている。 その課題をクリアするため、現在重点的に行っているのが“前さばき”の動き。進行方向に向かって、上半身の前で下半身を動かすことを意識したトレーニングだ。接地したまま脚が後ろに流れるのではなく、一瞬で大きな力を地面に加えて蹴り上げ、それによって得た反発力を活かして一気に身体の前へと脚を運ぶことで、加速させることが狙いだ。 最大の難しさは、脚力も形も異なる健足と義足のバランスを取りながら、いかに同じ力を地面に加え、同じ動きをしていくかだ。これは、地道なトレーニングの積み重ねでしか習得することができない。 陸上競技の100mは、10数秒での勝負でしかない。そのわずかな時間での栄光を勝ち取るため、アスリートは長い時間をかけ、わずかな感触やバランスと向き合いながらの試行錯誤の日々を送っている。高桑選手もまた、未完成であり、だからこそ可能性を秘めている自分自身の走りを追求し、葛藤し続けている。
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過去は過去、前進あるのみで切った再スタート
パラ陸上界にとって、昨年の世界選手権は大事な一戦だった。各種目4位以内には、東京パラリンピックの出場国枠が与えられることになっており、日本ではそのまま選手が内定することが通達されていた。 髙桑選手にとって最も可能性が高いとされていたのは、世界ランキング5位の実力を持つ走り幅跳び。実際、2015年の世界選手権では銅メダル獲得という実績を持っている。本番での強さは、髙桑選手の真骨頂でもある。彼女自身、十分に4位以内を狙えると考えていた。 しかし、結果は6位。5m04と、その年のシーズンベストでもあり自己ベストでもあった5m27からは程遠い記録に終わった。 「練習してきたことは自信にもつながっていましたし、誰が表彰台に上がるかわからないという中で自分にもチャンスはあると思って臨みました。ただ、少し不安を払拭しきれなかった部分もあって……。6本すべて力の限り跳べたとは思いましたが、それでもどれも自分の中で印象に残っていないんです。今思うと、単なる流れで終わってしまったなと思います」 いくつもの反省点があった。ふがいない自分が悔しくもあった。だが今、髙桑選手は決してその世界選手権に執着してはいない。 「あの試合が、自分にプラスになったとかマイナスになったとか、そういうふうには考えていないんです。ただ、自分がやるべきことがはっきりしましたし、課題がたくさんあることもわかりました。そうであるならば、あの大会のことを考えるよりも、次に向けて練習あるのみだと思っています」 過去にとらわれるのではなく、課題を冷静に見つめ、やるべきことをやる。前に進み続けるためにーー。それが髙桑早生というアスリートの姿だ。
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“過去”と“今”で異なる「楽しさ」の意味
陸上を始めて、今年で13年目となった。数々の世界の舞台を経験し、メダル獲得の実績も持つ髙桑選手だが、最も色濃く記憶に残っているのは、12年ロンドンパラリンピックだ。100m、200mともに予選を突破した髙桑選手。超満員のスタジアムで行われた決勝レース、同クラスでは日本人でただ一人、カクテル光線の中を走り抜けた。初めて経験した“世界最高峰の舞台”は、まさに“夢舞台”であり、アスリートとしての“スタートライン”でもあった。 「毎日いろいろなことを吸収して、純粋に陸上競技を楽しんでいた時期でしたね。あの時、陸上が楽しいと思えたからこそ、そしてロンドンパラリンピックで世界の舞台に立つことの素晴らしさを感じることができたからこそ、今もこうして陸上競技と向きあっているのだと思います」 あれから8年の歳月が流れた今、当時とはまったく違う感覚の下で走りを追求している。 「当時は陸上を始めてまだ数年で、粗削りな部分が多かったからこそ、課題となる的が大きかったので、矢もあたりやすかったんです。でも、その的はどんどん小さくなってきていて、矢をあてるのが難しくなってきています。ただ、難しいからこそやりがいがある。それが陸上の醍醐味だと思っています」 毎年、前年の自分自身を超えることを目標にしているという髙桑選手。レースは、これまでの陸上競技人生のすべてをかけた “集大成”でもあり、次に向けての“通過点”でもある。来年の東京パラリンピックもその一つだ。 1年後の夏、髙桑選手は最高のパフォーマンスを発揮し、そして次へのスタートを切るーー。

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