千葉市にある稲毛インターナショナルスイミングスクール。7年前、秦選手とパラトライアスロンを引き合わせ、彼女の人生を大きく変えた場所だ。もともと水泳選手だった彼女は、さらなる高みを目指し、出勤前の早朝に練習できる環境を求めて、同クラブに通うようになったのは2008年のことだった。そこで気になる人たちがいた。同スクールを拠点とするトライアスロンクラブのメンバーだ。
「一緒に水泳を練習した後、トライアスロンクラブの人たちは、バイクやランの練習に行くんです。
みんな楽しそうで、すごくまぶしく映りました。そんな姿を見ていたら、『私もやってみたいな』と思ったんです。」
パラトライアスロンの存在を知ったのも、この頃だった。同クラブのメンバーから「この間の大会で、義足で走っていた人を見かけたよ」ということを聞き、障がいの有無に関係なくトライできることがわかったのだ。
そして、パラトライアスロンへの気持ちに火をつけたのが、あるスポーツ専門誌の表紙を目にしたことだった。そこには競技用義足を履き、ポーズを決める米国人選手の姿があった。ひと目見て、その女性に目を奪われた。「なんて、美しいんだろう……」鍛え上げられた筋肉と自信に満ちた表情に魅了された。
「雑誌でパラトライアスロンの選手の姿を見た時は、アスリートとしての美しさに衝撃を受けました。それで、私もトライアスロンをやってみたいという思いが強くなったんです」
その後、2012年ロンドンパラリンピックへの挑戦を終えた秦選手は、トライアスロンに転向することを決意した。