香西宏昭×鳥海連志×古澤拓也インタビュー

清水「アジアパラでの悔しい敗戦が大阪カップで得た自信に」

―― 2020年東京パラリンピックの1年前に開催される「三菱電機WORLD CHALLENGE CUP 2019」(MWCC)において実施される国際強化試合は、チームにとってどんな位置づけでしょうか。

網本) 今年に入ってチームにはさらに新たな力が生まれていて、それを強化合宿や海外遠征で修正しながら、より強固なものへと磨いてきました。強化試合では強豪オーストラリア相手にどこまで強くなれているかが試されるだけに、今後を占う意味でも、非常に重要な試合になると考えています。

清水) 昨年1年間は“ベーシック”と言われる基礎の部分を見つめなおし、積み上げてきましたが、今年はそれを土台に、どう戦略を組み立てていき、判断していくかに注力しています。そして、次はそれを勝利につなげることが問われますし、自分たちのやり方でしっかりと“勝てるバスケ”を確立させたいと思っています。

柳本) 今年に入ってからの強化合宿や国際試合で明確な課題がどんどん出てきて、練習ではそれを一つずつ克服してきました。MWCCでの強化試合ではそれを出し切って、自分たちの現在地を確認し、その後に控えるアジア・オセアニアチャンピオンシップス(AOZ)につながる試合を積み上げていきたいと思っています。

―― 苦しい時期が続く中、チームは後退することなく、着実に力をつけてきたという印象があります。チームやご自身が成長・変化を遂げたターニング・ポイントは何だったと思いますか?

網本) 大きかったのは、今年2月の大阪カップ。高さがないチームなので、ディフェンス一つとっても、ジャンプか、ピックか、スイッチかなど、全員がお互いの動きを理解し、息の合ったミスの少ないプレーが求められます。昨年の世界選手権優勝のオランダ、準優勝のイギリスに対して、「これがジャパンのバスケットやで!」というものをコート上で出すことができたのが大阪カップでした。負けはしたものの、しっかり戦えたからこそ今、「次、勝つためにはどうしたらいいか」と次へのステップに進めています。

清水) 個人的には昨年10月のアジアパラ競技大会です、日本代表として初めての公式戦で、めちゃくちゃ緊張したんです。でも、試合を重ねる中で動きも良くなり、チームの状態も上がっていく中で決勝を迎えました。にもかかわらず、中国に35-65と完敗。その後、何度もビデオを観たのですが、自分のプレーが本当にひどかった。「あぁ、大舞台ではこうなってしまうのか」と身に沁みました。でも、逆に良かったなと。実際、大阪カップではその経験から、観客の様子が見えるほど広い視野でプレーできたんです。アジパラから繋がった大阪カップでした。

柳本) 私は年齢的に一番下というのもあり、選手ミーティングでも自分から意見を言えないところがありました。でも、昨年10月からU25での合宿を重ね、年齢的にも経験値的にもチームを引っ張る立場になって気づいたのは、みんなで話し合うことの大切さです。やっぱり言葉で言わないと、自分のこともわかってもらえないし、相手のことを理解することもできません。それからちょっとずつ意見を言うようになって。最近ある先輩が「あまねが意見を言ってくれて、すごくやりやすい」と。私の変化がチームが良くなるきっかけになっていたら嬉しいなと思います。

柳本「東京につなげたい!ベンチからの声が観客をも巻き込んだ盛り上げに」

―― オンコート、オフコート、それぞれのご自身の役割について教えてください。

清水) 私がオフェンス面で、今一番力を入れているのが、ペイントエリアに少し触れるくらいの距離からのシュート。ミドルシュートでもなく、ゴール下のシュートでもない、中途半端な距離のシュートです。そこでチャンスを得る機会が結構多いことに気が付いて。これが高確率に決まれば、チームの得点力を高めることができると思っています。実は、昨年までは代表に入ったばかりで自分の立場も役割も確立されてなくて、正直、自分のことで精いっぱいでした。「まず自分が舞台に上がらなければ」という気持ちが強くて、なかなかチームのことまでは考えられなかったんです。でも、今年に入って、「自分がレベルアップする方法はわかってきたと思うから、今度はそれを周りと共有してみたら?」とある人から言われたんです。それをきっかけに、「みんなで強くなっていきたい」と思うようになって。今では自分からいろんな人に話しかけて、プレーの意見や感想を言うようにしています。

網本) チーム全員がいい精神状態で試合に集中できる雰囲気を作りたいというのが一番にあります。例えば、自分がベンチにいる時はコートの5人が力を発揮しやすいような、あるいはミスをしても焦らずに、すぐに気持ちを切り替えられるような声がけをするように心がけています。コートの中では自分が攻める時には攻める、周りを活かす時には活かすといったメリハリのついたプレーをしたいと思っています。パス一つにしても、チェストなのかバウンズなのか、ふわりと浮かした方がいいのか……どのタイミングでどういうパスをすれば味方の好プレーを引き出すことができるか、ということを考えながらプレーするように意識しています。

柳本) 私の一番の持ち味はスピードだと思っているので、スピードを生かした“ナイス・ディフェンス”で、より速く、より多く、チームのオフェンスの機会を作ることです。また、最近強く意識しているのは“デッド・タイム”。プレーが停止している状態の時に、ポジション取りやピックなど、次の自分たちのプレーを有利にするための動き。そして、試合に出ている間は、とにかく誰よりも走り続け、一方、ベンチにいる時には、叫ぶくらい大きな声でチームを盛り上げること。疲れていても、ベンチからの声を耳にするだけで「よし、頑張ろう!」ってなれるんです。それと、昨年の大阪カップの時、ベンチからスタンドに向けて声を出しながらガッツポーズとかしていたら、観客の皆さんが一緒に盛り上がってくれて、チームもいい雰囲気になったんです。コート上の5人とベンチ、会場が一体になって戦っているような雰囲気を、試合の最初から最後まで作りたいと思っています。


―― 女子日本代表といえば、ティップオフの際にはベンチからの「Joy! Joy!」という掛け声が見どころの一つですよね。

網本) あれは「試合を楽しんでいこう!」という意味と、ベンチメンバーも含めて「12人みんなでこれから戦うよ!」という意味の掛け声なんです。橘香織前HCの考案で始めたので、5年以上続いているのですが、私たちチームにとっては大事なルーティンになっています。

柳本) 観客の方たちも一緒になって、手拍子とともに「Joy! Joy!」と言ってくださった試合は、本当にすごく盛り上がる。それが東京パラリンピックでもできたらなと思っています。

網本「現実離れの理想ではなくチームが本気で目指せる銅メダルが目標」

―― 最後に2020年東京パラリンピックでの目標を教えてください。

網本) チームでの目標は「銅メダル」です。2大会連続でパラリンピックに出場さえしていない女子日本代表にとっては「メダル」という言葉を口にすることは勇気がいることです。でも、やっぱり出るからにはメダルを狙いたい。ただ、「金メダル」は今の私たちにはやはり遠過ぎると思うんです。世界の頂点に立つことは、そんなに甘くはない。現実離れした理想を掲げるのではなく、今のチームが本気で目指せる目標を掲げたいという思いがありました。もちろん銅メダルも、今の私たちからすれば大きなチャレンジです。高いハードルかもしれないけれど、十分に可能性はあると思っています。

清水) もちろん、心の奥底にあるのは、選手なら当然「金メダル」です。私たちも「金メダルを狙います」と言いたい。でも、みんなでたくさん話し合った結果、今のチームに最もしっくりきたのが「銅メダル」でした。いっぱいいっぱいに背伸びをしなければいけないけれど、でも決して現実味がまったくないものではない。全員が納得して気持ちを一つにして目指すことができるのが「銅メダル」だと判断しました。

柳本) 私も「金メダル」と言いたい気持ちはすごくあります。でも、やっぱり「金メダル」となると、今の自分では何かひっかかりを感じるんです。一番腑に落ちたのが「銅メダル」。「絶対に取ってみせる!」という強い気持ちになりました。

網本) 北京パラリンピックでは4位だっただけに、銅メダルと4位との差がどれほど大きいかは身をもって知っています。だからこそ、東京ではみんなで一丸となって絶対に銅メダルを取ります!

COLUMN チームメンバーの素顔

Q.チーム一の「盛り上げ隊長」は?

「疲れを吹っ飛ばしてくれる芸人キャラの北田」

全員) 北田千尋(笑)!
清水) この間の合宿でも、明日が最終日という日の夜にいきなり替え歌を熱唱してくれたんです。「7日間を乗り切った 私たち 今夜荷造りできるよ とてもうれしいみ~んながんばったぁ~」って(笑)。おかげで疲れが吹っ飛びました!
網本) 千尋はほんま芸人やから(笑)。彼女の夢は「いつかホールで歌うこと」らしいですよ!

Q.チームで一番几帳面なのは?

「用意周到の小田島はみんなの“かけこみ寺”!?」

網本) 几帳面なのは、あまねじゃない?
柳本) 私は、どんな練習でも絶対手を抜かない(萩野)真世さんだと思います。
清水) オダジ(小田島理恵)じゃない?
網本&柳本) あぁ!たしかに!
清水) 海外遠征の時なんかも何でも持ってきているから、何かあった時にみんなが声をかけるのはスタッフよりもまず先にオダジだよね!
網本) オダジに言えば、なんとかしてくれるみたいなとこあるよね(笑)。

PROFILE

網本 麻里 (あみもと まり)
持ち点:4.5

1988年11月15日、大阪府生まれ
小学3年からバスケットボールを始めたが、右足首の骨が変形する障がいのために中学1年の時にドクターストップがかかりバスケを断念した。その後、車いすバスケに転向し、16歳で日本代表デビュー。2008年、チーム最年少19歳の時に北京パラリンピックに出場。7試合で133点を挙げる活躍で得点王に輝き、チームを4位に導く。22歳の時に出場した2011年の女子U25世界選手権では1試合51得点の世界記録を樹立した。2014年世界選手権で得点王。2016年からはオーストラリア、ドイツ、スペインと海外リーグでもプレーしている。

清水 千浪 (しみず ちなみ)
持ち点:3.0

1982年11月8日、滋賀県生まれ
小、中学生の時は陸上選手として大会に出場。中学2年時には1500mで県大会で優勝する。大学では女子サッカー部に所属。3年の時に休学し「JAPAN サッカーカレッジ」の女子サッカー専攻科に入学。なでしこリーグ(当時はLリーグ)のアルビレックス新潟レディース、京都バーンズでプレーし、2008年に引退。2012年に病気で車いす生活に。2015年に車いすバスケを始め、翌2016年には日本代表候補入り。昨年、アジアパラ競技大会で日本代表デビューを果たす。

柳本 あまね (やなぎもと あまね)
持ち点:2.5

1998年8月4日、京都府生まれ
2歳の時に病気で下肢機能障がいとなる。本格的に車いすバスケを始めたのは中学1年の時。中学時代は健常のバスケ部に入部し練習した、2014年、高校1年の時にアジアパラ競技大会で日本代表デビュー。今年5月には女子U25世界選手権に出場し、エースとしてチームを史上最高のベスト4に導いた。

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