「雪上のマラソン」とも呼ばれ、上り、下り、平地が約1/3ずつで構成された起伏のあるコースを、専用のスキー板とスキーポールを使って滑走し、タイムを競うクロスカントリースキー。短距離種目から長距離種目まで滑走距離も様々で、全身の筋力に加え、優れた持久力やリカバリー力、滑走テクニックなどが必要とされるタフな競技。
自身やライバルの得手不得手を踏まえ、レース中の位置取りや勝負をかけるタイミングを探るのはもちろんのこと、コースの重要なポイントを押さえたり、その日の天候や雪質に合ったワックスを見つけられるかなど、選手だけでなく、監督やコーチも含めたチームでいかに戦略を立て、コースを攻略できるかが勝敗の鍵を握る。
コレだけは覚えておきたい!観戦ルールブック
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- クロスカントリースキーとは
専用のスキー板とスキーポールを使って起伏のある雪上のコースを滑走し、タイムを競う競技。
「スタンディング(立位)」 「シッティング(座位)」 「ビジュアリー・インペアード(視覚障がい)」の3つのカテゴリーごとに競技を行い、順位を競う。
一般的にレースは、上り・下り・平地が約1/3ずつで構成された1周約1km~5kmの周回コースで行われる。
滑走距離別にスプリント、ミドルディスタンス、ロングディスタンスの3つがあり、走法別にクラシカルとフリーの2つがある。
クロスカントリースキーでは、これらの滑走距離と走法の組み合わせによって種目が決定し、この他にチームで行うリレー種目もある。
コースイメージ
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- クロスカントリースキーのルール
専用のスキー板とスキーポールを使って起伏のある雪上のコースを滑走し、タイムを競う。
滑走距離別にスプリント、ミドルディスタンス、ロングディスタンスの3つのレースがあり、走法別にクラシカルとフリーの2つがある。
これらの滑走距離と走法の組み合わせによって種目が決定する。
●クラシカル
予めコース上に作られたシュプールと呼ばれる平行な2本の溝の中を、スタートからゴールまで走りきらなくてはならない。
左右のスキー板を平行に保ちながら交互に蹴り出したり、両足を揃えたままストックで雪面を押して進む走法などがある。
上り坂はスキーを逆ハの字にして雪面を踏みしめて登るのが一般的。
クラシカルの一例(ダイアゴナル走法)
●フリー
どんな走法でもよいが、スキー板を逆ハの字に開いてスケートのように片足で雪面を蹴り出し、
もう片方の足で滑る動作を繰り返して進むスケーティング走法が主流。
クラシカルよりもスピードが出るが、その分より強い筋力が必要。
【カテゴリーと用具】
各種目とも「スタンディング(立位)」「シッティング(座位)」「ビジュアリー・インペアード(視覚障がい)」の3つのカテゴリーごとに競技を行い、順位を競う。
使用する用具や受けられるサポートもカテゴリーによって異なる。
1.スタンディング(立位)
3つのカテゴリーのうち、異なる障がいを持つ選手が最も多く集まるカテゴリー。
下肢または上肢に障がいがあり、立った状態で滑ることができる選手が該当する。
中には義足や義手を装着して滑る選手もいるが、下肢に障がいのある一部の選手は座位カテゴリーを選択することもできる。
用具は、クロスカントリースキー専用のスキー板やブーツ、スキーポールを使用する。
●スキー板とワックス
クロスカントリースキー用のスキー板は幅が5cmほどとかなり細く、中央部が厚く盛り上がったアーチ型の形状をしている。
フリーの場合は通常のスキーと同様、滑走面全体に滑走性を高めるグライダーワックスを塗るが、
足を真後ろに蹴り出すクラシカルではそれでは前に進めないため、キックができるよう滑走面の中央部分に滑らないグリップワックスを塗る。
●ブーツ
クラシカルは、足首の開放度が高いランニングシューズに似た形状のものが多い。
一方足首に負担がかかりやすいフリーのブーツは、足首を保護するためにしっかりした形状になっている。
●スキーポール
地面を押して前に進んだり、下りで身体のバランスを取りやすくするための重要な用具。
長さはクラシカルでは身長の83%以内、フリーでは身長の100%以内という規定がある。
2.シッティング(座位)
下肢に障がいがあり、立った状態で滑ることが難しい選手が該当するカテゴリー。
シットスキーに乗り、スキーポールで雪面を押して滑走する。障がいの程度が軽い選手はよりスピードの出る前傾姿勢で座り、
一方障がいの程度が重く前傾姿勢を保てない選手は、深く座ることでバランスを安定させる。
レースではクラシカルレースで使用するシュプールを使用する。
●シットスキー
クロスカントリー用の2本のスキーの上にソリに似たシートを取り付けたもの。スピードが出るよう、軽さを重視したシンプルな作りのものが多い。
自身の障がいの種類や程度に合わせてオーダーメイドする選手がほどんど。
3.ビジュアリー・インペアード(視覚障がい)
視覚障がいの選手が該当するカテゴリー。
全盲の選手と弱視の選手がおり、ガイドと呼ばれるスキーランナーが選手をゴールまで先導する。
●ガイド
選手の前を滑ってゴールまで先導するスキーランナーのこと。
ガイドは基本的に声でコースのアップダウンやカーブを選手に伝え、選手の身体に触れたりすることはできない。
但し、急な下り坂など、危険な箇所でのみ選手との接触が認められている。
ガイドはスキー技術や走力はもちろんのこと、選手に的確に指示を出せる判断力など、優れた競技力が必要であり、
加えて、選手が全力を出し切るためには両者の信頼関係も不可欠。
●マイク・スピーカー
ガイドが出す指示を確実に選手に届けるためのツール。
ガイドが口元にマイク、腰にスピーカーを装着して先導することが多い。
【基本ルール】
●パーセンテージ・システム
スタンディング、シッティング、ビジュアリー・インペアードの各カテゴリー内において、障がいの種類と程度が異なる選手たちが
公平に競い合えるようにするためのシステム。
各カテゴリー内で障がいの程度に応じて分けられたクラスごとに係数(最大100%)が設定されており、スタートからゴールまでの実走タイムに
その係数を乗じた計算タイムで順位を決定したり、リレーでチーム編成を決める際など、あらゆる場面で適用される。
【各種目について】
スプリント
1km前後の短距離を滑走し、ゴールまでのタイムを競う種目。
予選は、前の選手と30秒の間隔を空けて順番にスタートするインターバルスタートで行い、パーセンテージ・システムで算出した計算タイムが速かった上位12名が準決勝へ進出。
準決勝は6名ずつ2組に分かれて行い、各組上位3名の計6名が決勝へ進出する。
準決勝・決勝は、インターバルスタートではなく6名同時スタートで行う。
ただし、障がいのクラスが異なる選手がいる場合は障がいの程度に応じて決められたタイム差をつけてスタートし、最終的にゴールした選手の順番がそのまま順位となる。
滑走距離はカテゴリーによって異なる。
ミドル・ディスタンス(中距離),ロング・ディスタンス(長距離)
いずれも予選はなく、一度の滑走で勝負が決まる種目。前の選手と30秒の間隔を空けて順番にスタートしていくインターバルスタートで行い、
パーセンテージシステムで算出した計算タイムによって順位を決定する。滑走距離はカテゴリーや男女によって異なる。
リレー
混合リレーとオープンリレーの2つがあり、男女や障がいの区別なく、2~4名で構成されたチームで競い合う団体戦。
矢印型に一定間隔で並んで一斉にスタートし、1周2.5kmの2種類のコースをそれぞれ2周する、計10kmでの計算タイムを競う。
チームごとの選手の障がいの程度を公平にするため、4区間の選手の係数の合計を、決められた値以下になるように構成しなければならない。
但し、女子選手は18%、シッティングの選手は12%減らした係数で計算する。
第1・第3走者がクラシカルまたはシットスキー、第2、第4走者がフリーで行う。
次走者は、前の走者の全身が中継ゾーンのフィニッシュラインを越えた時点でスタートすることができる。
・混合リレー
女子選手を1名以上入れ、第1走者~第4走者の係数の合計が330%以下になるように構成しなければならない。
・オープンリレー
第1走者~第4走者の係数の合計が370%以下になるように構成しなければならない。
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- クロスカントリースキーのクラス分け
スタンディング、シッティング、ビジュアリー・インペアードの3つのカテゴリーの中で、障がいの種類と程度によってさらに細かなクラスに分けられている。
各カテゴリーにおいて、障がいの種類と程度が異なる選手たちが公平に競い合えるようにするためにパーセンテージ・システムを使用し、
カテゴリーごとに競技を行い、順位を競う。
●スタンディング(立位)
下肢または上肢、もしくは上下肢に障がいがある選手で、立った状態で滑ることができる選手のカテゴリー。
LW2~9のクラスがあり、障がいの部位や程度、使用する用具などによって細かく分かれている。
●シッティング(座位)
下肢に障がいがあり、立った状態で滑ることが難しい選手のカテゴリー。
LW10~12のクラスがあり、数字が大きいほど障がいの程度は軽い。
●ビジュアリー・インペアード(視覚障がい)
視覚障がいの選手のカテゴリー。B1~B3のクラスがあり、数字が大きいほど障がいの程度は軽い。
B1は全盲の選手のクラスで、残り2つは弱視のクラス。
監修:特定非営利活動法人 日本障害者スキー連盟