【#AFTER TOKYO2020】池 透暢 選手(車いすラグビー)AFTER TALK編
AFTER TALK

【#AFTER TOKYO2020】池 透暢 選手(車いすラグビー)AFTER TALK編

史上初めて1年延期となり、コロナ禍という厳しい中での開催となった東京パラリンピック。選手たちも行動範囲が制限され、原則無観客のなかで試合が行われた。後編では、そんな中での東京大会は、池選手にはどんなふうに映ったのか。そして、今後にどのようにつなげていきたいと考えているのか、インタビューしました。あれから約1年、【#AFTER TOKYO2020】池 透暢 選手のAFTER TALK編です。

  1. Topic 01 高知県庁に送られてきた手紙

    • 東京パラリンピックでの戦いを終えて、地元である高知県に戻った池選手が、改めて感じたのが予想以上の注目度の高さだった。

      特に印象に残っているのが、池選手宛に高知県庁に送られてきたという80歳代の女性からの手紙だった。

      「“東京パラリンピックは、私自身の考えや人生観を変えさせてくれるような大きな出来事でした”というようなことが書かれてありました。80歳代の方の人生観を変えるくらい感動が伝わったんだなと思うと、本当にすごい舞台だったんだなと改めて思いました」

      その東京パラリンピックで銅メダルを獲得したことについて、池選手は少し間をおいて「いろいろな感情があります」と話す。

      「やっぱり自国開催で銅メダルに終わったことは悔しかったです。開幕前は、コロナ禍での大会開催に対して反対意見もあったりして、色々な方がさまざまな想いで見ていたと思うんです。強豪・オーストラリアさえも4位とメダルを持ち帰ることができなかった難しい戦いの中、メダル獲得という結果が残せたことは、誇れることだと思っています。何より色々な方に喜んでいただくことができた。十分ではないかもしれませんが、少しお礼ができたんじゃないかなと思います」

  2. Topic 02 一生に一度の経験かもしれない

    • 今ではパラリンピックを知ってもらえる機会が増え、子どもたちがパラアスリートと触れあう中で目を輝かせてくれることも珍しい光景ではない。「そんなこと、僕の子ども時代には無くて、パラリンピックの存在すら知る機会がなかったかもしれない」と池選手は語る。東京パラリンピック開催が決定したことによって確実に認知度が高まり、そして実際に開催したことによって人気度も高まった。それは間違いない事実だ。

      しかし、これが一過性のもので終わらないように池選手は「次は自分が動く番」と考えている。

      「東京パラリンピックに向けての数年間、メディアをはじめ、たくさんの方々が動いてくれたことで機運が高まりました。大会期間中は、毎日、競技のテレビ放映が行われた反響が大きかったことは間違いありません。そうやって間口を広げていただいたわけですから、今度は僕たちが動いて、東京パラリンピックの価値を伝える番。それが僕たち東京パラリンピックに出場した選手の役割なんじゃないかなと思っています」

      池選手は車いすラグビーに留まらず、さまざまなパラスポーツの魅力を伝えていきたいと考えている。その理由は、「その子どもにとっては、一生に一度の経験かもしれない」からだ。

    • 「学校訪問やイベントでパラアスリートと触れ合う機会は増えましたが、特に地方の子どもたちにとっては、もしかしたらそれが一生に一度のことかもしれません。それならせっかくの貴重な機会、車いすラグビーだけではなく、ほかのパラスポーツのことも知ってもらえたらなって思うんです。その方が、その子にとっても世界が広がるんじゃないかなって。それと、そういう選手が増えれば、パラスポーツ界の横のつながりも広がると思うんです」

      有言実行とばかりに、池選手は早速動き出した。もともと選手として活動していた車いすバスケットボールのチーム練習に積極的に参加したり、大阪で行われた車いすソフトボールの体験会にも足を運び、まずは自らが色々なパラスポーツに触れて発信していこうとしている。

  3. Topic 03 地元・高知県を拠点に

    • 生まれも育ちも高知県の池選手は、一度も拠点を移したことがない。一番の理由は、地元が好きだから。しかし、それだけではない。

      実は、池選手も何度か関東に拠点を移すことを真剣に考えたことがあった。全国トップクラスの選手たちが多くいる関東のチームの方が、より質の高い練習ができ、日本代表への道も近づくと考えたからだった。

      しかし、最終的には地元・高知に残ることを決意した。

      「優秀な選手の多くが関東に行ってしまって、地方のチームは穴が空いた状態となり、衰退していくのを見ていました。選手が強くなりたいと思うのは当然ですし、そんな選手が成長したから競技が強くなったという側面もあるので、決してそれが悪いことだと言いたいわけではない。僕も、関東に行った方がいいのかなと思ったこともありました。でも、どこの場所にいてもやれるということを、僕自身が地元の子どもたちに証明したいなと思ったんです」

      今では高知県を代表するアスリートの一人となった池選手。自分の存在が、子どもたちにも大きな影響を与えていることは自覚している。

    • 「地方にいると、物理的に無理なことはあります。でも、何をものさしにするかで物事は違って見えてくる。地方にいるから、環境がないから、自分には無理と決めつけずに、できることを探してほしいなと。高知にいる僕が、アメリカのリーグに挑戦したのは、そんな想いからです。目標を達成させる道はいろいろとあることを示すことで、地方の子どもたちにも“自分たちにもできる”という自信を持ってもらえたらと思っています」

      東京パラリンピック直後、「今後については未定」としていた池選手が、パリを目指す気持ちになったのには理由がある。実は今、日本代表候補の一人でもある22歳の白川楓也選手が、池選手と一緒にトレーニングをしたいと、出身地である北海道から高知県に移住し、共に汗を流している。それが、池選手には大きな刺激となっている。

      「日本代表を目指して努力する若い白川と一緒に練習するうちに、自分の中でも楽しいと思う部分が膨らんできました。次の選手を育成してバトンを渡す、そんな後押しをする立場でパリを目指すのもいいなと。もちろん自分もまだまだ現役として成長していきたいですが、これまでとはまた一つ違う段階に今、来ているのかなと感じています」

大会概要

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『東京2020パラリンピック競技大会』
 Tokyo 2020 Paralympic Games

開催期間:2021年8月24日(火)~9月5日(日)
競技数 :22競技
開催地:日本・東京
運営主体:国際パラリンピック委員会(IPC)
     東京2020オリンピック・パラリンピック組織委員会
競技数:22競技

陸上競技は8月25日から競技がスタート、最終日の9月5日まで熱戦が続いた。
会場は東京・新国立競技場とマラソンが東京の街なかで実施。

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