雪山のコース上に設置された旗門の間を正しく通過しながら滑り降り、タイムを競う冬季の花形競技。
種目には高速系種目と技術系種目があり、本格的な大会ほど雪質はスケートリンクのように硬く、スピードが出る上、コースによっては
最大斜度が40°を超えるところもある。いずれの種目もいかに地形と雪質と旗門設定を読んで戦略を立て、最後まで滑りきることができるかが鍵となる。
高速系種目は何といっても最高時速100kmを超えるスピードやジャンプなどの迫力、技術系種目は自身の身体と用具を巧みにコントロールし、
最速のラインで旗門をクリアするスキーヤーの華麗なテクニックに注目だ。
コレだけは覚えておきたい!観戦ルールブック
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- アルペンスキーとは
雪山を舞台にしたスキー競技で、コース上に設置された旗門の間を正しく通過しながら滑り降り、タイムを競う。
高速系種目の滑降(ダウンヒル=DH)とスーパー大回転(スーパー・ジャイアント・スラローム=スーパーG/SG)、
技術系種目の大回転(ジャイアント・スラローム=GS)と回転(スラローム=SL)の4種目に加え、スーパー大回転と回転を1本ずつ滑るスーパー複合の計5種目がある。
コースイメージ
各種目の比較
各種目とも「スタンディング(立位)」「シッティング(座位)」「ビジュアリー・インペアード(視覚障がい)」の3つのカテゴリーごとに競技が行われ、順位を競う。
各カテゴリー内で障がいの種類と程度が異なる選手たちが公平に競い合えるようにするため、
アルペンスキーでは、選手の障がいの程度に応じてタイムを算出するハンディキャップ・システムが適用される。
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- アルペンスキーのルール
コース上に設置された旗門の間を正しく通過しながら滑り降り、タイムを競うアルペンスキー。
高速系種目の滑降とスーパー大回転、技術系種目の大回転と回転の4種目に加え、スーパー大回転と回転を1本ずつ滑るスーパー複合の計5種目がある。
各種目とも「スタンディング(立位)」「シッティング(座位)」「ビジュアリー・インペアード(視覚障がい)」の3つのカテゴリーごとに競技が行われ、順位を競う。
使用する用具や受けられるサポートもカテゴリーによって異なる。
1.スタンディング(立位)
3つのカテゴリーのうち、異なる障がいを持つ選手が最も多く集まるカテゴリー。
下肢または上肢、もしくは上下肢に障がいがある選手で、立った状態で滑ることができる選手が所属する。
但し、下肢に障がいのある一部の選手は座位カテゴリーを選択することもできる。中には義足や義手を装着して滑る選手もいる。
スタンディングカテゴリーの選手の例
2.シッティング(座位)
下肢に障がいがあり、立った状態で滑ることが難しい選手が該当するカテゴリー。チェアスキーに乗り、ストック代わりのアウトリガーと呼ばれる用具を持って滑る。
●チェアスキー
その名の通り椅子の要素を兼ね備えたスキー。選手はシートに座って身体をベルト等で固定し、スキーを操作する。
●アウトリガー
ストックの代わりに手に持つ用具で、滑走中の選手のバランス保持を助ける働きをする。
スタンディング(立位)の一部の選手とシッティング(座位)の選手など、障がいのために体勢が不安定な選手が使用する。
3.ビジュアリー・インペアード(視覚障がい)
視覚障がいの選手が所属するカテゴリー。全盲の選手と弱視の選手がおり、障がいの程度によって
カテゴリー内でさらに細かな3つのクラスに分かれている。ガイドと呼ばれるスキーヤーが選手をゴールまで誘導する。
●ガイド
選手の前を滑ってゴールまで誘導するスキーヤー。優れたガイドほど、つかず離れず、選手との距離を一定に保って滑ることができる。
選手が全力を出し切るためには、ガイドの優れたスキー技術と、選手との信頼関係が不可欠。
●無線機・スピーカー
ガイドが出す指示を確実に選手に届けるためのツール。
大半のペアが無線機(イヤホン+マイク)を使用するが、声の方向が極めて重要になる全盲の選手の場合は、
ガイドが口元にマイク、腰にスピーカーを装着して誘導することが多い。
【全種目共通ルール】
●ハンディキャップ・システム
スタンディング、シッティング、ビジュアリー・インペアードの各カテゴリーにおいて、障がいの種類と程度が異なる選手たちが公平に競い合えるようにするためのシステム。
各カテゴリー内で障がいの程度に応じた係数(最大100%)が設定されており、スタートからゴールまでの実走タイムに、その係数を乗じた計算タイムで順位が決定する。
●スタート
スタートは一定間隔(例:40秒など)に決められていることが多く、選手は基本的に制限時間内に自分のタイミングでスタートする。
スタートバーに選手の身体が触れ、バーが一定の角度まで開いた瞬間からタイム計測が開始される。
●旗門(ゲート)
コース上に設置される、通過すべきルートを示すための目印。回転では1本のポール、他の種目では2本のポール間に旗をつける。
原則、インサイドゲートとアウトサイドゲートで1旗門だが、アウトサイドゲートが省略される場合もある。
レースごとに任命されたセッターが旗門を立てるが、その設定によってコースの性格が変わり、勝負の行方を左右する。
選手は装着している全てのスキー板で、コース上に設定された全旗門を正しく通過しなければならず、
ポールをまたいでしまった場合や、旗門不通過のまま滑り降りてしまった場合は失格となる。
●ゴール
選手がフィニッシュラインを通過し、光電管を横切ったタイミングでタイム計測が止まり、ゴール地点にあるスコアボードにタイムが表示される。
【各種目について】
滑降(ダウンヒル=DH)
5種目の中でもっともコースが長く、最高時速100km以上という、もっとも速いスピードで滑り降りるスリル満点の高速系種目。
旗門と旗門の間隔が長いため、弧の大きな高速ターンが連続する。
コース内に設けられるジャンプのセクションでは、時に20~30mもの大ジャンプが見られることもある。
コースのライン取りを誤ると大けがにつながるおそれがあるため、5種目の中で唯一レース本番前に同じコースを使った公式トレーニングが義務付けられている。
<滑降の主なルール>
・基本的に1回の滑りで勝敗を競う。
・世界大会でのコースの標高差は450~800m。
・レース前の公式トレーニングで、本番と同じコースを試走することが義務付けられている。
スーパー大回転(スーパー・ジャイアント・スラローム=スーパーG/SG)
滑降に次ぐ高速系種目。高速ターンを連続させながら、斜面変化に富んだコースを滑り降りる。
滑降の特徴であるスピードに対する強さやジャンプの要素に加え、連続するターンに対応する技術が同時に求められる。
滑降のようなレース前の公式トレーニングは行われないため、インスペクションと呼ばれる直前の下見のみで戦略を立てなければならない難しさがある。
<スーパー大回転の主な種目別ルール>
・1回の滑りで勝敗を競う。
・世界大会でのコースの標高差は400~600m。
大回転(ジャイアント・スラローム=GS)
アルペン競技の基本とも言われ、この種目からレースを始める入門者も多いが、非常に奥の深い一面も持つ技術系種目。
スピードを落とさずにあらゆるターンをこなす卓越した技術と緻密なコース戦略、リカバリー能力など、アルペンスキーに求められる要素が凝縮されている。
1回のタイムで勝敗を競う高速系種目と異なり、旗門設定の異なる2本を滑り、その合計タイムで順位を競う。
<大回転の主な種目別ルール>
・基本的に同日に行われる2本の滑りで勝敗を競う。
・1本目と2本目では異なる旗門設定を滑る。
・世界大会でのコースの標高差は300~400m。
回転(スラローム=SL)
素早い動きと細かいリズムのターンテクニックが要求される技術系種目。
様々なリズム変化が仕組まれた旗門設定は攻略が難しく、タイムを縮めようと攻めすぎてミスをする選手が多く、完走率も低い。
一方、旗門ギリギリのラインを狙っていくため、手や全身でポールをなぎ倒していく回転特有のテクニックが見どころ。
<回転の主な種目別ルール>
・基本的に同日に行われる2回の滑りで勝敗を競う。
・1本目と2本目では異なる旗門設定を滑る。
・世界大会でのコースの標高差は140~220m。
スーパー複合(スーパーコンビ=SC)
スーパー大回転と回転を1日のうちに1本ずつ滑り、2本の合計タイムで順位を競う。
高速系種目と技術系種目という全く性質の違う種目を行わなければならいという点が、この種目の特徴であり、難しさ。
スペシャリストとオールラウンダーの勝負を見ることができ、一方の種目を得意とし、大きく差をつけられるスペシャリストと、
どちらも派手に遅れずに滑りきるオールラウンダー、どちらが勝つかに注目が集まる。
<スーパー複合の主な種目別ルール>
基本的に2本のいずれのルールも、各単独種目として開催される際のルールと同じ。
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- アルペンスキーのクラス分け
スタンディング、シッティング、ビジュアリー・インペアードの3つのカテゴリーの中で、障がいの部位と程度によってさらに細かなクラス分けがされている。
このクラスごとにハンディキャップ・システムで使用する係数が設定されており、
同じカテゴリー内で障がいの種類と程度が異なる選手たちが公平に競い合えるようになっている。
●スタンディング(立位)
下肢または上肢、もしくは上下肢に障がいがある選手で、立った状態で滑ることができる選手が所属する。
LW1~9のクラスがあり、障がいの部位や程度、使用する用具などによって細かく分かれている。
※スタンディングカテゴリーには様々な障がいの選手が集まっているため、
他のカテゴリーのように、クラスを表す数字が大きくなる順に障がいの程度も軽くなっているとは一概に言えない。
●シッティング(座位)
下肢に障がいがあり、立った状態で滑ることが難しい選手が該当するカテゴリー。
LW10~12のクラスがあり、数字が大きいほど障がいの程度は軽い。
●ビジュアリー・インペアード(視覚障がい)
視覚障がいのカテゴリー。
B1~B3のクラスがあり、数字が大きいほど障がいの程度は軽い。B1は全盲の選手のクラスで、残り2つは弱視のクラス。
監修:特定非営利活動法人 日本障害者スキー連盟